今谷明『京都・一五四七 上杉本洛中洛外図の謎を解く』平凡社
です。
従来、上杉本洛中洛外図屏風に描かれた京都の景観について、「理想像・あるべき姿」を描いた空想的都市景観であるとされたり、「伝狩野永徳筆」に引きずられてか、「永禄年間の京都の景観」とされてきました。
本書では、これらの通説を一蹴し、この屏風に描かれた景観は天文16年(1547)の5月から閏7月のわずか3ヶ月ばかりの間に絞られることを論証しております。
その論証の方法は、武家屋敷、寺社、公家の邸宅の一軒一軒について、古文書、古記録などから、その建物が現存した年代の上限・下限を調べてゆくというものです。この方法で調査できる全ての建築物に対し上限・下限を調査した結果、上記3ヶ月の間に収まってしまったということです。まさに偏執狂的な作業という他ありません!
これだけ徹底的に調査・考察したものに対し異論を挟むのは不可能ではないかと思うのですが、どうもそういうわけではないようです。…というわけで次回は、黒田日出男著『謎解き洛中洛外図』です。
ところで、近刊の『芸術新潮2007年11月号(「ミスター桃山 天下の狩野永徳!」)』においても、本書の内容はほとんど紹介されておりません(逆に、この『芸術新潮』では前述の黒田氏の説が“ほとんど定説になっている”と紹介されていました)。
本書の旧版の発刊時にはかなりセンセーショナルでかなり話題になったようですが、今では“過去の遺物”の様に扱われてしまっているのが残念でなりません。私的には今なお十分説得力をもった説に思えるのですがいかがなものでしょうか?
付記)
本書の本文では、景観年代だけではなく、本屏風の製作者についても言及し、狩野永徳筆を否定しています。しかしながら、この新版の出版に伴い、あとがきで「製作者が『絶対に永徳ではない』とこだわるつもりはなくなっている」とトーンを弱めています。

