先日御紹介しました山室恭子著『中世のなかに生まれた近世』は確かに名著ですが、
出版が1991年であり、その10年以上たってしまっております。よってその後の研究状況がどうなったのか、知りたくなってしまいます。
そこでその飢えを癒してくれるのが、本書でしょう。
有光有學編『戦国期印章・印判状の研究』岩田書院
この本は、それぞれ著者の違う論文集であるので、統一感はありませんが、それでもほぼ地域的には全国をほぼ網羅し、時代も
鎌倉時代から江戸時代まで言及されているので、このテーマにおける現時点での総括といえる内容となっています。
さて、前述の『中世のなかに生まれた近世』との
比較で言えば、有光有學氏が「今川氏の印章・印判状」の中で、次のように批判しています。
@今川氏の発給文書は、『中世のなかに生まれた近世』で調査された文書が800点余りであるのに対し、現在は1200点余りが知られており、数的には5割方増えている。この相違は数だけに止まらず、質的にも変化しており、前者では寺社宛の比率が高かったが、家臣宛の文書の比率が高くなってきている。
A山中氏が統計的手法により可能な限り全体像を把握しようとしたのに対し、やはり文書一つ一つを分析する必要がある。
B山中氏が、文書の内容を分類しているが、その分類の仕方は再検討する必要がある。
A、Bについては見解が分かれるところだと思いますが、Bの再検討の必要性についてはその通りだと思います。
さて、
その他の論文について、いくつか述べますと、まず、平山優氏が「戦国大名武田氏の印章・印判状」で武田氏の発給文書について概説しております。『
武田信玄と勝頼』で触れました竜朱印や晴信朱印などについても初見、使用状況などが解説されており、同書で興味を持った方は併読をお勧めします。
また、『中世のなかに生まれた近世』で全く触れられていなかった
四国の状況を、川岡勉氏が「四国における印章・印判状」で説明しています。
以上、値段が高め(8900円(税別))ですが、発行600部だそうで、興味のある方は早期の購入をお勧めします。