2008年01月13日

『落日の室町幕府』水藤真

 今回はひきつづき京都戦国史関連で、
   水藤真『落日の室町幕府』吉川弘文館
です。先日紹介した『棟札の研究』と同一の著者になります。
 副題に「蜷川親俊日記を読む」とある通り、室町幕府の政所執事伊勢貞孝の家臣であり、政所代を務めた蜷川親俊の記した日記を読むというのが主題です。
この本の印象は大学の講義録といった感じでしょうか。私たちの多くが関心を持つような畿内政治史の大きな出来事について特筆して叙述するのではなく、この史料の特徴(実際にどのような事柄がどの程度(何回)述べられているのか)といったことが解説されています。
ところで、私は『親俊日記』の原文を見た事がないのですが、本書では、年間行事や催し物についての記述で一章を割き、その他は登場人物の解説や時代背景の記載なのですから、この史料のおおよその性格が察せられます。
特に著者は、木沢長政の戦死についての叙述を例にあげ、「ところがその記述は『親俊日記』や『大館常興日記』よりも公家の『言継卿記』の方が詳しいのである。(中略)全く不可解と感じるのだが、それは常興にしても親俊にしても、もはやこれら畿内の情勢に主体的には関わり得ないそういう立場の反映ではないかと思う」と述べております。これが室町幕府の重職である政所代の日記なのですから、驚きです。この頃には政所も政所代も形骸化していたことの現われなのでしょう。
そう言った意味で本書の書名である『落日の室町幕府』から、室町幕府最末期の政治状況が詳述されていると思って購入された方はいささか期待外れかもしれません。本書ではあくまでこの時代に生きた一個人が“自身に関わりのあること”を記述した史料についての解説です。
ところで、本書では前述したようにこの時代の時代背景について概説されているのですが、これは便利でした。近年の機内戦国史の研究状況が平易に記載されています(ここでもその“たたき台”となっているのは今谷明氏の著書(『室町幕府解体過程の研究』、『戦国期の室町幕府』)です!!)。これは一読の価値があると思います。
結局、『親俊日記』という史料の性格上、ダイナミックな内容ではありませんが、史料への基本的なアプローチの方法として読めば、たいへん勉強になる本です。
posted by 天王寺屋 at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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