渡辺京二『日本近世の起源 戦国乱世から徳川の平和へ』洋泉社MC新書
前回紹介した『百姓から見た戦国大名』も中世から近世への変革が一つのテーマでしたが、この『日本近世の起源』もその書名が示す通り、中世から近世への道のりを叙述したものです。
ただ、この著者の視野やもっと広いものです。時代は鎌倉時代から、現代まで、対象は戦国大名にかぎらず、寺社権力なども視野に入れております。
もちろん言うまでもないと思いますが、これは黒田氏の著書の視野が狭いということではなく、戦国時代に的を絞ったものなのか、もっと概説的に述べるのかという著作意図の違いです。
この本は以前にハードカバーで出版されたものの新書化であるらしく、巻末に三浦小太郎氏の解説がついています。この本の内容はこの解説に要領よくまとめられているので、それを読んで購入するか決めても良いと思います。
さて、前述したように著者の視点は中世・近世に止まらず、今現在の問題ともリンクさせているので、読了すれば単なる歴史書以上に考えさせられる部分があると思います。ただし、著者は「徳川期日本人と近代日本人とは全く異なった世界の住人である」とも述べており、過去と現代とを安直に結びつけるのは避けなければなりません。
私が特にこの中で興味深く思えたのは、中世の法律についてです。著者は笠松宏至氏の言葉を引きながら「鎌倉幕府の裁判には、成文法であれ、慣習法であれ、判例法であれ、およそ近代の法概念をもって法と呼ぶに足るものは何一つ行われていなかった」、「あたりまえの中世人が、幕府の新しい立法事実や、さらにその法文の内容など知るチャンスは皆無にひとしく、したがって当然ながら、大半の幕府法は、社会的にはごくごく無名の存在であった」と述べているところです。まさに「目からウロコ」という感じでした。この第五章だけでも読んでいただければ、本書の面白さがわかっていただけると思います。
以上、前回ご紹介した黒田氏の著書よりも一般の方にはこちらのほうが興味深く読めると思います(若干イデオロギー的なものに関する叙述があり、私などは閉口してしまう部分はありましたが)。

