なお、以下の内容は黒田氏の著書についてですので、過去の私の記事(『謎解き洛中洛外図』黒田日出男@)を参照の上お読み下さい)。
この論文の内容は、同屏風の研究史の概説となっており、黒田氏の著書とかぶりますが、黒田氏の著書より後に刊行されたため、氏の説も相対化しております。
具体的には、「『上杉年譜』も『謙信公御書集』も、やはり近世における編纂物であるため、より確実な史料による裏付けが必要である」ことは黒田氏自身も認めていることを指摘し、さらに「信長贈与説も『上杉年譜』や『謙信公御書集』に先行する軍記に記載されているのである。これらの史書が軍書に基づいた可能性をまったく排除することはできない。あえていえば、軍書作者の創作の可能性すらある」と述べておられます。
また、本屏風の発注者について、宮島新一氏の説(『画壇統一にかける夢』今谷明・宮島新一共著:文英堂)を引き、「発注者が義輝であるとすれば、その死後は制作が放棄された可能性を指摘して義輝発注説を否定し、同年の狩野松栄・永徳父子による大徳寺聚光院の襖絵制作からこのころ自由に永徳を使える人物として三好義継を発注者に挙げている」と紹介しています。
以上、これを見ても黒田氏の説が必ずしも定説ではないことがご理解いただけると思います。

